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前渕敏治 経歴 大阪府警 福島署 不祥事 [◆ 警察官の不祥事]

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前渕敏治 経歴 大阪府警 福島署 不祥事

 たった1本のたばこの吸い殻で、30年以上のキャリアを重ねた警察官人生が台無しになるとは想像すらしていなかっただろう。強盗強姦事件の証拠品であるたばこの吸い殻を捏造(ねつぞう)したとして、証拠隠滅罪に問われた大阪府警福島署元刑事課長の元警部、前渕敏治被告(55)=依願退職=に7月末、有罪判決が言い渡された。優秀で部下思いと周囲の評価も高かった警察官が、前代未聞の犯罪に手を染めた背景には、社会人なら誰でも経験する「上司との不和」という事情があった。

■「犯人捕まらへんから…」

 「紛失が発覚することによる煩わしさから逃れようとする安易な犯行。捜査への信頼を揺るがした」

 大阪地裁は7月25日、証拠隠滅罪に問われた前渕被告に懲役4月、執行猶予3年(求刑懲役4月)、元部下で警部補の稲原孝被告(45)=起訴休職中=に検察側の求刑である罰金10万円を上回る罰金20万円の有罪判決を言い渡した。

 法廷の証言台に立ち、直立不動の姿勢で主文を聞いた2人は被告席に戻った後も、姿勢を正したまま、感情の読み取れない表情で判決理由に聞き入った。

 検察側の冒頭陳述や判決によると、2人が罪を犯した経緯はこうだ。

 平成23年6月。福島署刑事課係長だった稲原被告は、同署管内で15年3月に発生した強盗強姦事件の被害者の室内から押収した証拠品のたばこの吸い殻が、証拠品保管倉庫室からなくなっていることに気付いた。府警による総合監察を10月に控え、証拠品の点検をしている最中だった。

 稲原被告はすぐに上司の刑事課長だった前渕被告に報告。前渕被告は再度の捜索を指示したが結局、発見できなかった。

 強盗強姦罪の時効は10年(16年の刑事訴訟法改正で15年に延長)。この時点で時効まで2年を切っていたことから、すでに解決の見込みはないと考えた前渕被告は「総合監察さえ乗り切れば、何とかなるのでは」と考えた。

 「この事件は犯人捕まらへん。作って置いといたらええんや」

 稲原被告にたばこの吸い殻捏造を提案する。「第三者の吸い殻を利用すれば、仮に鑑定に回されたときに第三者に迷惑がかかる」として、自分の息子のたばこを、紛失した吸い殻に似せるよう加工し、それを稲原被告が証拠品保管倉庫室に置いた。23年8月のことだった。

■上司の叱責を恐れ…

 なぜ前渕被告はすぐに上司に吸い殻の紛失を報告せず、捏造という行為に手を染めたのか。

 証拠の紛失そのものは確かに大問題であり、前渕被告は証拠品の保管責任者という立場上、何らかの責任を問われたかもしれない。ただ、吸い殻を紛失した時期は不明で、前渕被告が刑事課長になる前にすでに紛失していた可能性が高かったのだ。捏造が発覚した場合のリスクを考えると、普通なら上司に紛失を速やかに報告する選択肢を選ぶケースといえる。

 前渕被告の不可解な行動の“謎”は公判で明らかになった。

 前渕被告は今年6月の被告人質問で証拠隠滅を決断した理由を問われ、「上司の副署長との不和」が背景にあると供述した。副署長に紛失を報告すれば、どのような指示や叱責を受けるか分からない。「対応に追われ、刑事課の仕事が何もできなくなると考えた」というのだ。

 副署長と折り合いが悪くなった原因については「よく分からない」と振り返る一方、「自分の部下への指揮能力に納得がいっていないようだった。自分が副署長の指示に従わないと、自分を飛び越えて直接部下に指示がいくこともあった」と不満を漏らした。

■「眠るのが怖い」

 前渕被告が、副署長との人間関係に悩んでいる様子は部下や家族の目にも明らかだった。

 稲原被告は自らの被告人質問で、どこか言いにくそうに「折り合いが悪そうだというのは下の立場から見ていても分かった」と打ち明けた。

 前渕被告の妻も証人として出廷。福島署で人間関係に悩んでいた頃の夫の様子が忘れられない、と涙ながらに証言した。「遅くまで起きている夫に声をかけると『眠るのが怖い』と言うんです。『眠ると朝が来てしまう』と…」。妻は、夫に寄り添うことしかできなかったという。

 稲原被告の弁護人は「事件の本質は前渕被告と副署長の人間関係にある。どちらが悪いということではなく、本当に相性が悪かったということ」と指摘した。

 証拠隠滅か上司からの叱責か。本来なら悩むべき事柄ではないが、前渕被告は前者を選んでしまった。法廷で「愚かな選択でした」とうなだれ、「まじめに勤務している多くの警察官に迷惑をかけ、本当に申し訳ない」と頭を下げた。

 捏造直後の23年9月、前渕被告は港署地域課に課長として異動した。10月の府警の総合監察も切り抜け、福島署時代の吸い殻の捏造は発覚しなかった。福島署を離れ、目に見えて明るくなったという。

 妻は当時の様子を法廷でこう振り返った。

 「『若い部下を教えるのは本当におもしろい』。そう話す夫は昔に戻ったようでした」

■急展開

 しかし今年2月9日、事態は急展開した。強盗強姦事件の容疑者が浮上-。稲原被告から前渕被告のもとへ、そんな衝撃的な情報がもたらされたのだ。

 前渕被告は被告人質問で当時の経緯を説明した。

 「捏造した吸い殻を鑑定に出せば、大変なことになる」と翌10日、古巣の福島署を訪れ、副署長に捏造を報告したという。

 「容疑者浮上と聞いて驚いた。発覚するとかしないとか、あまり考えないようにしていた」

 そして3月8日。新聞報道で証拠品の捏造がスクープされ、前代未聞の不祥事が露呈した。

 府警捜査1課と福島署が強盗強姦事件の容疑者として、男(39)=公判前整理手続き中=を逮捕したのは、捏造が表面化した当日。被害者の室内に残されていた指紋と男の指紋が一致したことが決め手になったという。

 吸い殻の紛失について、ある府警幹部は「吸い殻があったら、(捜査で)どうだったかというのは何ともいえない」と言葉を濁している。



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